神奈川新聞連載「ルーキー【下】FWハーフナー・マイク」

 町中で日本人から英語で話しかけられると、ハーフナー・マイクは「思いっきり日本語で答えますね」。流ちょうな日本語に面食らう姿を見て、おもしろがっているのだという。1994年に日本国籍を取得しているが、両親はともにオランダ人。日英蘭の3カ国語を操る18歳は、ちゃめっ気にあふれる。
 「規格外」という言葉が似合う。194センチという横浜M史上最長身、U-18日本代表という経歴だけではない。新体制発表で持ち味を聞かれ、「平山(相太=ヘラクレス)より打点の高いヘディングです」。同じく長身で、現在オランダで活躍中のFWを引き合いに出し、報道陣を笑わせた。体も口も、ビッグなルーキーだ。
 確かにその高さは大きな武器だ。年代別代表で共に戦い、同じくユースから昇格したGK秋元陽太は「海外とやるときなど、苦しい時はマイクにければどうにかなる、という感じがあった」と振り返る。岡田監督も「立っているだけで存在感がある」と、新人らしからぬ空気を感じ取っている。
 けた外れなのはサイズだけではない。特筆すべきは優れた身体能力。プロGKだった父と、陸上の7種競技でオランダチャンピオンになった母を持つ「サラブレッド」だ。トップチームのフィジカルテストではすでに上位の数値をマークする。
 岡田監督が着目するのも、高さよりむしろシュートの巧みさ。「日本にはいないタイプ。うまくても点を取れないやつはたくさんいるが、マイクは違う」。インサイドキック一つとっても振り幅が大きく、伸びてスピードのある外国人選手特有の球質だという。
 初めてメディアに取り上げられたのは小学校5年の時。当時住んでいた北海道の大会で活躍し、翌日の新聞にこう書かれた。「あのディド・ハーフナーの息子が活躍」─。父はかつて名古屋や札幌でプレーし名物GKとして親しまれ、現在は横浜MのGKコーチを務める。「ディドの息子」という側面が嫌が応にもクローズアップされてきた。
 仕方ないと割り切ってはきた。だがもう同じ土俵に立った。「おれはおれなんだ」との思いを強くする。夢はイタリア・セリエAユベントスでプレーすること。大器の目線は、父の名が遠くにかすむほどの高みを見据えている。
 
(神奈川新聞より)